更新日時:2026-03-31
「ものづくりのまち」のイメージが強い川口ですが、江戸時代から続く農業地域としての一面があることをご存知でしょうか?
農業に適した自然条件と、荒川を活用した効率的な物流システムに恵まれ、商品を効率良く大都市江戸に供給してきた歴史があります。
しかし、昨今の都市化が進む中で、農地の減少や後継者不足など、川口市の農業は様々な問題に直面しています。
そんな中、市内の生産者によって作られた優れた品を「川口農業ブランド」として認定し、PRしているのが川口農業ブランドの取り組みです。
今回は、ブランドの生みの親、飯村副会長、山岡会長にブランド誕生から現在に至るまでの紆余曲折を伺いました。

農家を応援したい、という想い
Q:そもそも、どんなきっかけでブランドの話が始まったのですか?
次世代に農業を引き継ぐ為に、農家の経営が安定することが不可欠、というのはこの話が始まる前から共通認識としてありました。安心安全で品が良いものを「ブランド」として認定する制度を作り、地域の人に安心して川口のものを選んでもらえるよう、しっかり価値を伝えていこうというのがはじまりです。平成29年にまずは部会という形で小さなグループに分かれ、ブランドについての方向性を具体的に決めようというところから話がスタートしました。
考えがまとまらず、四苦八苦!
Q:そんな経緯があったのですね!ブランド立ち上げ時は、どんなことに苦労されましたか?
最初に、ブランドにふさわしい生産物を決めよう、となりました。例えば、最初から「深谷ねぎ」のようにその地域を代表する特産物があれば話は早かったのですが、川口にそういったものはありません。
川口の農業は「多品種・少量生産」です。限られた面積の農地で各々、色々な種類のものを作っているのが特徴です。様々な消費者ニーズに応えられる、という一方で地方の農業のように広大な農地で一つのものを作った場合に比べて、生産コストが高くなる、というデメリットがあります。
戦前は、広大な農地で大勢の人が協力して限られた品種を生産するのが主流でしたが、戦後の農地解放でそのような農地は解体されました。他にも様々な理由から農地は減少の一途をたどり、今ではそれぞれが独自の方針でやっているのが現状です。
そんな事情もあり、いきなりブランドをやるぞ!となっても、皆んなの意見がまとまらず苦労しました。最初はどうしたものかと頭を抱える日々。「ブランドなんて、できっこない」といった声も聞こえてくる始末…。現実は厳しかったですね。

起死回生の「じゃがいも」
Q:そんなご苦労が…。そこからどうやって話が進んだのですか?
右往左往している時に、戸塚にびっくりする大きさのジャガイモを作っている農家がいると聞きつけました。見に行ってみると普通のジャガイモの3倍〜4倍の大きさはありましたね。これは珍しい!ブランドにふさわしいということになり、そこから少しずつ話が進んでいきました。
そこからは、ブランドの定義などさらに具体的なことを詰めていき、シクラメン、チャボヒバ、鉄砲ユリと少しずつ認定商品が増えていきました。
3回目の会議でジャガイモの話になり、今思うと、あれがプロジェクトの芽が出た瞬間でした。

川口中を探して
Q:今は何件の農家がブランドに加盟しているのですか?
現在は、37件(令和6年度11月現在)の農家がブランドに加盟しています。
最初は、一軒一軒農家を訪ねて行きました。川口の農務課(現農政課)とも連携し情報を集めながら、「良いものを作っている農家がいるよ」と聞けば、会いに行きました。
ブランドの狙いを説明すると、賛同してくれる方が多かったですが、時には警戒されてしまうことも。そんな時は何度も足を運び、少しずつ信頼関係を築いていきました。3回目の訪問でようやく話を聞いてもらえた、なんてこともありました(笑)
今では、ブランドの認知度も上がってきたので、農家から直接話を頂いたり、農政審議会から紹介されることも増えました。認定の際は、必ず生産現場に足を運び現地調査の末、条件をクリアしたものだけがブランド品として認定されます。

今後の展望
Q:川口の農業では、現在どんなことが問題になっていますか?
一番は、後継者問題です。川口では現状、大部分の農家に後継ぎがいません。後継ぎがいない場合、生産者が体力的に継続が難しくなると農地を売ってしまったり、他の目的で使うようになります。特に幹線道路の周りはその傾向が強いですね。そういったことでどんどん農地が減っていくのです。
ですので、若い人に農業をやりたい!と思ってもらう為にも、農家の経営が安定していることが大切なんです。
ネガティブな話をすると、経験を積めば毎年必ず良いものが作れるという話でもなく、その年の気候条件によっては全然うまくいかない、なんてこともあります。努力が経済的な利益に結びつかないこともある、厳しい世界であることは事実です。
でもだからこそしっかり価値を伝えていく、安いから買うではなく、良いものだから選んでもらえるよう魅力を伝えていくのが「川口農業ブランド」の使命です。
最近は、地域のレストランとコラボして川口で採れた新鮮な野菜を使ってもらう取り組みが始まっています。こういった事を今後も増やしていく予定です。
やっぱり、農家に「農業ブランドに入って良かった」と思ってもらいたい。目まぐるしい世の中で常に変化しながら、これからも「50年後も農が誇れるまち川口」をスローガンに、皆んなで一丸となり進んでいきたいです。

※この記事は令和6年に作成しました。
取材・記事作成:自分史作成 まごの耳

