更新日時:2026-04-24
川口農業ブランドものがたり川口にお住まいの方ならマンホールの蓋などに、ふと隠れミッキーならぬ、隠れ鉄砲百合を見つけたことがあるかもしれません。
昭和41年に市の花として制定され、長年市民に愛されてきた鉄砲百合。
今回は、専属農家としては市内で唯一、鉄砲百合を生産している矢作さんにお話を聞きました。
ルーツは鹿児島・沖永良部島(おきのえらぶじま)
Q:どんな経緯で、川口で広く栽培されるようになったのですか?
昭和14年頃に、沖永良部島から球根を持ち帰りこの地で栽培が成功したのが始まりです。当時は百合の需要が高く全盛期には川口で50戸以上の農家が栽培していました。
神根の農家が鹿児島へ渡り、球根の買い付けに行ったと聞いています。関東に持ち帰ろうとしたのはそれが初めての試みだったようで、地元の人には大歓迎されたとか。
今みたいに簡単に飛行機で行けるはずもなく、汽車と船を乗り継いだ長旅だったと思うので、先人の探究心はすごいですね。昔は、川口の生産者が島を訪れ生産方法を学ぶなど交流もありました。オリエンタル系の百合は輸入の球根を使っていますが、私たちは今でも変わらず、沖永良部から球根を取り寄せています。

Q:そんな歴史があったのですね!南国の植物を埼玉で栽培するのは大変そうですが…。
そうですね。百合の栽培は、温度管理が大切なので今みたいに冷蔵庫や温室がない時代は大変だったと思います。夜中に起きてボイラーに石炭をくべていた、なんて話も聞いています。
届いた球根が出荷できる状態になるまでは約3ヶ月かかります。冷蔵庫で40日ほど寝かせ、芽が出たら鉢に植えそこから出荷できる状態になるまで約2ヶ月温度調整をして育てます。商品になるまで病気にかからないようにするのが一苦労。毎日気温や花の状態を細かくチェックします。

18歳からこの道一筋40年
Q:矢作さんが、百合を扱う農家になったきっかけを教えてください。
家は、代々農家で私で4代目になりますので、継ぐのは自然な流れでした。当時は、作れば作っただけ売れたので気づいたら親父の仕事を手伝っていましたね。何もわからないところから、一つ一つ仕事を覚えていきました。
昔は、市場に出荷する際商品を一つ一つチェックされたので、値段が下がってしまわないよう、花を束ねる作業にも熱が入りましたよ。
一通りの仕事は何年か経つと覚えましたが、何年経っても一人ではできないのが百合栽培です。どうしても2〜3人必要なので、チームプレーですね。今は妻と二人体制なので、喧嘩したら私が早く謝って、仕事に響かないようにしています(笑)
今は人手の関係でなかなか難しいですが、若い時は休みもしっかりとっていました。お盆の時期は海、正月はスキーへ。休める時は決まっているので、そこでは思いっきり趣味を楽しむのも仕事を続けてこれた秘訣かもしれません(笑)
花嫁修行で生け花教室!?
Q:昔と今では売れ行きは変わりましたか?
ネガティブな話をすると、昭和天皇が亡くなったあたりから花の需要は落ち込みました。戦後直後から百合の需要は高く、作ったら作っただけ売れた時代が平成の初め頃までありました。昭和の全盛期には、うちの庭が球根の箱で埋まったほど。
昔はもっと人々の生活に花が浸透していました。和室や床の間に花を飾る慣習がありましたが、今では住宅の様式も変わり、和の花がマッチする家が少なくなったんでしょう。
また、生け花教室も花の需要を支えていました。昭和のバブルの頃は、会社の福利厚生で花嫁修行として女性社員に生け花を習わせる文化がありました。
Q:福利厚生で生け花教室なんて羨ましい…!矢作さんの百合の特徴はどんなところですか?
妻の実家が花屋なのですが、うちの百合を初めて見た時「葉がしまって、光って見えた」と言っていました。地方の農家さんだと、そのまま畑に直に植えて栽培するのが主流ですが、川口という土地柄、限られた土地でいかに効率良く作るかを考え、うちでは鉢で栽培しています。鉢で育てると、のびのびしすぎず葉がしまってその分花が引き立ちます。

鉄砲百合の魅力
鉄砲百合は、オリエンタル系のものに比べると派手さはないですが、清純で奥ゆかしく日本らしい花です。
昔使われていたラッパ銃に形が似ていることからこの名前がつけられましたが、花が横向きに咲くので、生け花、仏花として和の空間に彩りを添えるにはもってこいの花なんです。
花の魅力は、美しく咲くまでの過程を楽しめるところにあると思っています。造花は便利ですけれどそれがない。季節と共に花を愛でる、日常にそっと彩りを添えるお供として、鉄砲百合を選んでもらえたら嬉しいです。
**矢作さんの鉄砲百合が購入できる場所、イベント**
※現在一般向けの生産はおこなっておりません。
※この記事は令和6年に作成されました。
—————————————————–
取材・記事作成:自分史作成 まごの耳

