更新日時:2024-11-20

川口農業ブランドものがたり

 「桃栗三年柿八年」ということわざがありますが、出荷できる状態になるまでに20年かけて仕上げる「チャボヒバ」という植木を知っていますか?チャボヒバは、ヒノキの針葉樹の一種で、観賞用の植木として好まれてきました。

 チャボヒバを近くで見てみると、まるで木自身が意思を持ち、自らの体をくねらせたように幹がうねっています。機械は使わず、人の力のみで幹を曲げて育てるのですが、その姿はまるで巨人が作った盆栽のようにも見えます。

 どんな技がこれを実現させているのか?先祖代々、曲げの技を受け継いできた有限会社はしどの尾林弘一さん、和明さん親子に話を聞きました。

受け継がれる姿形、伝統技術

Q:どんな工程を経て、出荷の日を迎えるのですか?

 尾林弘一さん「まずは日光ヒバを台木に接木をして、3〜4mの高さに成長するまで15年ほど育てます。幹の直径が8cm頃になったら「曲幹仕立て」という方法で4人がかりで幹を曲げる工程に入ります。

 ノミで幹を割り、幹から芯を取り出します。芯を抜いたら、幹を藁で包んで荒縄で幹全体を縛りそこから鉄パイプも活用し、息を合わせて3箇所、4箇所と曲げを作りながら支柱に固定していきます。

 万が一縄が切れたり、木の反発する力に負ければ吹き飛ばされてしまうので、一瞬たりとも気が抜けない真剣勝負です。

  この方法で曲げを行うのは、全国でもここ安行だけ。

 この技は、親から子へ、子から孫へと、共に汗を流す中で代々伝えられてきたと聞いています。

 曲げの工程はそう頻繁にあるものではなく、練習する機会は限られている為、技を受け継ぐ方は一回一回真剣に向き合ってきました。

出荷までに20年

 曲げの工程を終えると2、3年見守り、そこから棚と呼ばれる葉が集まった部分を作っていきます。全行程を合わせると、出荷できる状態になるまでに20年ほどかかります。中には30年かけて育てる木もあります。

さ、さんじゅうねん…!子供を一人前に育てるよりも長いですね…!? 

 そうですね。まさに我が子を育てるような感覚に近いかもしれませんね。根気がいりますが毎日コツコツと立派に成長する日のことを夢見て手入れをします。特に骨が折れる作業が、夏の日差し対策です。最近は年々日差しが強いので、木が焼けてしまわぬよう今年は初めて寒冷紗を用い、日焼け対策をしました。暑さは人間にも容赦ないですからね、夏の時期は早朝から作業するなどしていますが、それでもしんどいですね…。

 買い手が決まり、出荷の日を迎えると立派に育てあげた達成感と共に、我が子が旅立ってゆくような名残惜しさを感じますね。出荷した後も、ふと「あの木はどうしているのか…」と気になることもあります。

 良いチャボヒバの条件はなんですか?と聞かれたらやはり「バランス」と答えます。父からは「盆栽を育てるように育てろ」とよく言われました。最近は、嬉しいことに海外のお客さんにも興味を持ってもらえることが増えました。海を超えてチャボヒバの魅力が伝わり、喜ばしいですが「価値を上げるも下げるも日々の仕事次第」と気が引き締まる思いですね。」

次の世代へ。

★尾林弘一さんと息子の和明さん

Q:和明さんは、どうしてお父様の後を継ごうと思ったのですか?

 和明さん「小さい頃から、祖父や父の仕事姿をいつも見ていたので自然と自分もチャボヒバを作りたいと思っていましたね。自然な流れだったかもしれません。

 最近は、ここ戸塚にも新しいマンションが続々と建ち、若い人が入ってきていますが、そういった人たちにも植木の魅力に触れてもらう機会を作りたいですね。自分のような若い世代の間で、もっと安行の植木に興味を持つ人が増えたら嬉しいです。」

Q:休みの日はどんな風に過ごされていますか?なところですか? 

 弘一さん「ゴルフによく行きますが、プレイ中にコースの植木が気になってしまい、こんなにたくさん誰が手入れするのだろう?など考えて気が散ってしまいます。職業病ですね(笑)」

 和明さん「読書とウイスキーですかね。飲み比べなんかも好きで、たま〜に父と晩酌することもありますよ。」

最後に

 最近の住宅事情を考えると、植木は誰しもが気軽に所有できるものでありません。しかし、手塩にかけて育てている人がいると知り、今後綺麗に手入れされた植木を見た時、思わず足を止めたくなるかもしれません。「コスパ」や「タイパ」などの言葉があるように、物事の効率が注目されがちな昨今ですが、そんな時代だからこそ、チャボヒバが持つ独自の存在感と美意識が海外の人をも惹きつけているのかもしれません。

 街でチャボヒバを見かけたら、慌ただしい日常から一瞬立ち止まり、ぜひその曲線美に癒されてください。

**川口市内で尾林さんのチャボヒバが鑑賞できるスポット**

・川口市立アートギャラリー・アトリア

・川口市立グリーンセンター

有限会社はしど ホームページ

※この記事は令和6年に作成されました。

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取材・記事作成:自分史作成 まごの耳